※本記事は、FREE Madeira / Bitcoin Atlantisによって公開されたYouTube動画 Jack Mallers "Intro to Bitcoin" at Bitcoin Atlantis 2024 の文字起こし&編集版です。
OK、みんな準備できてる?
無事にこの島にたどり着けたようだね。なんてクールな場所だろう?な?すごいよな。
まずは、すべての主催者に感謝の言葉を伝えたい。舞台裏で、どれだけ彼らが懸命に働いてきたか、キミたちに伝える言葉が見つからない。
ここにいるアンナなんて、もう信じられないくらい働き詰めだった。本当にね。だから、これを実現してくれたすべての人に、盛大な拍手を送ってくれ。
時に、彼らの仕事は感謝されないこともあるから。
さて、この最初のセッションは「Bitcoin 101」と呼んでいて、ランチまでの最初の4時間のブロックになる。で、「誰にこのイベントの口火を切ってもらうべきか」と聞かれたとき、人生で一番簡単な決断だった。
だって、もちろん彼しかいない。Jack Mallersだ。CNBCでは彼を“Jack Ballers”なんて呼ぶ人もいる(笑)。彼はとにかく、全部ぶち壊すスタイルだからね。
最後に彼とバックステージで会ったとき、彼は僕に聞いてきた。「プレストン、俺のトーク聞くの?」僕は言った。「もちろんだよ」
でも、彼が何を話すかは全く知らなかった。彼はステージに上がり、こう言った。「エルサルバドルがビットコインを法定通貨にします」
それが彼の最後の講演だった。
今回は違う国で同じことをやるとは思えないけど…わからないよね、Jackがステージに立つと何が飛び出すか。
僕は彼を友人であり、仲間のビットコイナーと呼べることを誇りに思っている。それでは盛大な歓迎を込めて、Jack Ballers…いやJack Mallers、唯一無二の彼に登場してもらおう!
Jack Mallers 登壇

みんな元気か?プレストン、ありがとう。人生で誰かに言われた中で一番優しい言葉だった。史上最高にクールな紹介だったよ。
ポルトガルのマデイラに来られて嬉しい。みんな、僕を呼んでくれてありがとう。本当にワクワクしてる。
で、プレストンが言ってたけど、「カンファレンスの開幕を飾って、ドカンと盛り上げてくれ。Bitcoin 101をやってくれ」って頼まれたんだ。
で、僕は思った。「Bitcoin 101って何だよ?」アルファベットでもつづれってこと?Bitcoin 101って何?彼は「わかんない。キミの仕事は、人々にビットコインを紹介することだ」と。
つまり、なんとかして、教育的で、インスパイアされて、そしてこの“ビットコイン”って何なのかを伝えるようなプレゼンをやってくれ、と。でもそれが何なのか、正直よくわからなかった。
で、ちょうどその頃、あのサトシ・ナカモトの新しいEメールが出てきたんだ。あのEメール、特にこの部分が、すごく興味深かった。

今でこそビットコインは15年目を迎え、あらゆるオルトコインやクリプトが登場してる。
「Proof of Stake(プルーフオブステーク)」、「Proof of Time(プルーフオブタイム)」、「Proof of History(プルーフオブヒストリー)」なんてのもある。
でも、このEメールを読んで、僕個人としては、Proof of Work(プルーフオブワーク)がどれだけ重要かを再認識させられた。
画面を読める人は見てくれ。サトシがEメールでこう書いてる:
残念ながら、P2Pの電子キャッシュを、信頼された第三者なしに機能させるためには、Proof of Workしか方法が見つかりませんでした。たとえ初期通貨の配布手段として使っていなかったとしても、Proof of Workはネットワークを調整し、二重支払いを防ぐために根本的に必要です。
このEメールを見た全員が「えっ!?」ってなるはずだ。
これが本当なら、イーサリアムはどうやってProof of Stakeで機能してるんだ?SolanaはどうやってProof of Historyで動いてるんだ?
本当に、サトシがこれを書いたなら、僕たちはこの意味を深く理解しないといけない。だから今回の「Bitcoin 101」で僕がやることは、かなり野心的なプレゼンになる。
PoWが分からない=ビットコインが分からない
サトシ・ナカモトがProof of Work(PoW)を使ってビットコインを作ったという、この革新を分解していこうと思う。
なぜProof of Workが“インターネット・マネー”に絶対不可欠なのかを理解しよう。そして、なぜProof of Workを使っていないアルトコインは、科学的に破綻しているのか。
これを、35分で一緒にやってみよう。OK?

Proof of Workを理解できないなら、ビットコインも理解できない。
ここで、僕の親友であり、偉大なビットコイン哲学者の「Gigi」に感謝を伝えたい。このプレゼンは、彼の研究の延長線上にある。
僕はGigiに連絡して、「キミのコンテンツを使ってBitcoin 101をやっていい?」と聞いたら、「光栄だ」と言ってくれた。だからGigiに拍手を。このプレゼンは、彼の力にも支えられている。
そして、今回のテーマは「Proof of Workを理解し、ビットコインを深く知る」ことにある。
ビットコインとは何か?

これは、答えるのが一番難しい質問だよね。ビットコインが何かを決めるのは、誰の仕事でもない。それは、あなた自身の仕事だ。
つまり「見る人の目次第」ってこと。ビットコインは、その人がそうであると望むものになれる。
でも、今回のプレゼンでは――Gigiの言葉を借りて――
「ビットコインとは、マネー + 時間 + エネルギー + 情報」
だと伝えたい。

もしこれと違う考えを持っていても、失礼に思わないでほしい。それはそれでいい。
でも、このプレゼンのあいだだけは、「ビットコインはこれ」と考えてついてきてほしい。この4つの要素を順番に見ていこう。
そして、なぜサトシがビットコインをこのように構成したのか、どれか1つでも欠けたら機能しない理由を、理解していこう。
Money(お金)
まず、「お金とは何か?」
これもまた、とんでもなく難しい問いだよね。でも、キミたちにまず知ってほしいのは、「お金は情報」だということ。
これから数分で、それをできるだけうまく説明してみる。

たとえば、川沿いにある村があって、人口は2人だけ。小さな村だ。1人はリンゴを育てていて、もう1人は小麦を育てている。
で、2人がこう言うんだ。「10個のリンゴと、小麦1袋を交換しない?」小麦の人が言う。「ああ、もちろんいいよ」って。
すごくシンプルな経済だよね。1人はリンゴを持っていて、もう1人は小麦を持っている。交換が成立する。

じゃあ、この村にもう2人加わったとしよう。1人は牛を飼っていて、もう1人は靴や服を作ってる。
リンゴの女性がまた言うんだ。「リンゴ10個あるんだけど、小麦1袋くれる?」でも、小麦の男は言う。「いや、リンゴはいらない。ステーキが欲しいんだ」
「でも私、リンゴしかないのに…」と彼女は困ってしまう。

だから牛を飼ってる男のところへ行って、「リンゴ10個でステーキくれない?」と聞く。すると彼は言う。「リンゴはいらないけど、最近畑で働いてばかりで靴がボロボロなんだ。新しい靴が欲しいな」
彼女はもうイライラして言う。「もう…わかったわよ」

そして靴を作っている男のところへ行って、「お願い、リンゴ10個あるから靴と交換してくれない?」と頼む。男は言う。「いいよ、リンゴと靴を交換しよう」
こうして彼女はリンゴを靴に交換し、その靴をステーキと交換し、最後にステーキを小麦と交換する。

こうして分かるのが「物々交換はめちゃくちゃ非効率だ」ってこと。
これが物々交換、つまり「バーター取引」と呼ばれるものだ。バーターは非効率で、ものすごく時間がかかる。大量の商品やサービスをバターで交換するのは本当に大変なんだ。
「欲望の一致」問題

このバター取引には、「欲望の一致(coincidence of wants)」という問題がある。「君が僕の欲しいものを持っていて、僕も君の欲しいものを持っている」――この一致が必要なんだ。
でも、これがないと交換できない。
しかも、専門分業もできなくなる。たとえば自分がとても特殊なものを作っていても、それを「偶然」欲しがる人がいないと意味がない。つまり「特化」できない。
だから、経済を発展させるには何か別のものが必要だ。つまり、お金が必要になる。今の僕たちは80億人が生きる世界にいる。

2人の村じゃない。僕の目の前にいるのも2人じゃない。たくさんいる。だから「交換のための媒介物」、つまりお金が必要なんだ。
お金とは何か?
お金は、「交換手段(medium of exchange)」だ。

それ自体を食べたり使ったりするために持つんじゃなくて、将来、何かと交換するために持つもの。
さっきのリンゴの女性が、もしお金を手に入れることができたら?彼女はリンゴとお金を交換し、そのお金を使って必要なものを自由に手に入れることができる。

つまり、お金はバターの問題を解決する。
お金の効果
お金は:
- より効率的
- 取引を簡単にする
- 経済のスケーリングを可能にする
さっきの「欲望の一致」の問題も解消される。

たとえば僕がスーパーに行って「明日Strike Europeの仕事するからステーキくれ」って言ったら、どうなる?店員はこう言うよね:「ふざけんな、Strike Europeなんて知らねーよ」
でも、僕はStrike Europeで働いてお金を得て、そのお金でステーキを買える。それが「欲望の一致を解消する」ということなんだ。
お金の効果まとめ

Q. お金は何を可能にする?
- A. バーターより効率的
- B. 取引を簡単にする
- C. 分業を可能にする
- D. すべて正解
正解はもちろん、D. すべて正解
良いお金とは?
良いお金とは、どんな性質を持っていないといけないのか?これはとても複雑で壮大なテーマだけど、簡単にまとめるとこんな感じ。

- 耐久性:時間を超えて存在できる
- 均質性:すべての単位が同じであること
- 可搬性:保管できて、運べて、検証できること
- 可分性:おつりが出せること
- 希少性:増やすのが難しいこと
- 価値の貯蔵性:貯めたときに価値を保っていること
お金の影響
このスライドで学んだように――お金は経済のスケーリングにとって重要だ。

"The better the money, the better the society, the better we can all trade, the more we can all focus on our interests."
そして、「お金の質が高ければ高いほど、社会はより良くなる」。
それはつまり、僕たち全員がもっと効率的に取引できるし、自分の関心や得意分野に集中して、特化したものを極めていけるということ。

それじゃ、リンゴは良いお金だろうか?明らかに良いお金じゃないよね。
- 腐りやすい(耐久性NO)
- 赤リンゴ、青リンゴ、種類がバラバラ(均質性NO)
- 運びにくい(可搬性NO)
- 「おつりで0.27リンゴです」とか言えない(可分性NO)
お金=情報

ここで重要なのは、「お金とは、誰が誰に何を借りているか、という情報を記録する手段」だということ。つまり、お金とは「情報」なのだ。
お金の2つの技術
人類の歴史において、私たちは主に2つの方法でお金を扱ってきた。

リスト(台帳):誰が誰に何を借りているか、という一覧
トークン(物体):誰が何を持っているかを示す物理的なモノ
トークンの例:金(ゴールド)

たとえば「金」は物理的なトークンだ。僕が100オンスの金を持っていれば、世界は僕に対して「100オンス分の価値」を返すべきってことになる。
- 耐久性 → ある
- 均質性 → OK
- 可搬性・可分性 → ×(重いし割りにくい)
- 希少性 → あり
- 価値の保存性 → 比較的高い
リスト(台帳)の例:ドル

もう一方で、「ドル」みたいな通貨は台帳型のお金だ。
- 可搬性 → ある
- 可分性 → OK
- でも、希少性がない(どんどん刷れる)
台帳 vs トークン

- 台帳(情報)は効率的。80億人規模でもスケーリングできる → でも、信頼が必要
- トークン(モノ)は信頼不要。自分で持てる → でも、スケーリングできない
どちらも不完全
だから台帳とトークンには、それぞれ限界がある。

- 台帳はインフレを起こせる(履歴改ざんも可能)・・・法定通貨(日本円、米ドル 他)
- トークンはネットで送れない(ネットに載せられない)・・・ゴールド、シルバー 他
情報とモノの違い
ここで、情報(台帳)と物理的なモノ(トークン)の本質的な違いを見てみよう。

たとえば:
あなたがリンゴを1個持っていて、私もリンゴを1個持っているとする。そして、私たちがそのリンゴを交換したら――お互いにリンゴは1個のままだ。
でも、
あなたがアイデアを1つ持っていて、私もアイデアを1つ持っていて、それを交換したとしたら――私たちは2つのアイデアを持つことになる。
この例が示すのは、「情報を交換すること」と「モノを交換すること」は、まったく違うということ。
- 情報はコピー可能で、共有すれば倍になる。
- でもモノは、交換しても数は増えない。
モノ(トークン)の問題点

情報はネット上で瞬時に移動できるが、モノ(トークン)はそうではない。たとえば、金(Gold)はiPhoneの中に入らない。脳の中に保存することもできない。
でも情報は違う。情報はネットワーク上で移動できるし、誰でもアクセス可能だ。
情報(台帳)の問題点

一方、情報(台帳)にも問題点がある。複製が容易であるがゆえに、二重支払いの問題(Double Spending Problem)があるからだ。
記録が改ざんされたり、複製されたらどうする?例えば、FRBのような中央機関が、履歴を「変更」してしまう可能性もあるよね。
サトシ・ナカモトが目指したものは?
では、サトシは最終的に台帳とトークンのどちらを作ろうとしたのだろうか?

彼のEメールや初期の書き込みを読み解くと、こう述べている:
「歴史的に見て、人々は希少なコモディティ(scarce commodities)を貨幣として用いてきた」
つまり、彼はトークン(金や塩など)の文脈を参照している。だが、Eメールの下の方を見てみると、こう書かれている:
「これまで、scarce commodity(希少なモノ)を通信チャネル(=インターネット)を通じて移転できたことはなかった。それを信頼された第三者なしで実現した例はない」

ここで彼は、「金などのトークンはネット上で使えない」と明言している。つまり、それらをオンラインで動かすには、必ず中央の管理者が必要になるということ。
そして彼は続けてこう書いている:
「もし、“第三者なしでインターネットを通じてやり取りできるお金”というものが求められるのであれば――それは、今まさに可能になったのだ」
ビットコイン・ホワイトペーパーでも同じ

ビットコインのホワイトペーパーの中でも、サトシはこれを明確にしている。
彼はビットコインを「エレクトロニック(電子的)」と表現し、さらに「チェーン(chain)」という言葉で記述している。
つまり、ビットコインとは:

- 金のような「物理的なコイン」ではなく
- インターネット上で流通可能な
- 電子的な「記録の連なり(=チェーン)」

これらを踏まえて、僕たちが理解すべきなのは:
- デジタル世界では「物理的トークン」を流通させることは不可能
- 金をインターネット上で動かすことはできない
- つまり、インターネット上に「デジタルな希少性(digital scarcity)」を生み出すには、トークンではなく“リスト(台帳)”が必要

もしサトシが登場して、こう言ったらどう思う?
「みんな聞いてくれ!これが僕の作った“ビットコイン”だ!見てくれ、この物理的なコインを!」
――そんなわけないよね。
サトシが作ったのは台帳。それはリスト(List)であり、情報であり、電子的な記録の鎖(チェーン)鎖だ。
潤滑油としての「お金」

お金は、バター経済のための潤滑油(lubricant)として発明された。でも、今の僕たちには、潤滑油とオイル交換の両方がとっくに必要なんだ。
ふぅ。長かったね。ここまでついてきてくれて、ありがとう。
ステップ①完了:サトシがビットコインを発明する第一歩
ということで、サトシ・ナカモトがビットコインを発明する上での最初のステップは、まず「お金とは何か?」を深く理解することだった。

- なぜバーター(物々交換)は機能しないのか?
- なぜ80億人規模の経済ではバーターは使えないのか?
- そして、なぜ「お金」という仕組みが必要なのか?
その上で、最高のお金を作るなら、それは「リスト(台帳)」にすべきか? それとも「トークン(物理的なモノ)」にすべきか?
サトシが導き出した答えは明白だったんだ。
Time(時間)

では、次のパートに行こう。「Time(時間)」だ。
ここからは、君たちの脳をぶっ壊すような話になるかもしれない。でも、もうちょっとだけ付き合ってくれ。
サトシと時間

ビットコインのホワイトペーパーを読むと、サトシが「時間」について語っている箇所が多くある。実際、全8セクションのうち、3つが時間に関係している。
つまり、ホワイトペーパーのほぼ半分が「時間」について書かれているんだ。
ビットコイン=「タイムスタンプサーバー」

ホワイトペーパーの第3セクションには、ビットコインが「タイムスタンプサーバー(timestamp server)」であると書かれている。
僕、実はビットコインの歴史が大好きなんだ。Strikeの仕事をしてなかったら、ビットコイン歴史家になってたと思う。
ソースコードにも“Timechain(タイムチェーン)”と記載がある

サトシがビットコインの最初のコードに残したコメントを見ると、“Timechain”という言葉が何度も登場している。
「Proof of Workを全員に知らせ、ブロックがTimechainに追加される」
つまり、サトシにとって時間は、ビットコインを構成する上で極めて重要だった。
なぜ「時間」がそんなに重要なのか?

なぜだと思う?
それは、「誰が誰に何を支払ったか」というリストを作るには、トランザクションの絶対的な順序を知らなければならないからだ。
例:$10を2回使ったら?

たとえば、僕が$10を持っていて――
- 友達のボブに$10を送る
- そのあとキャロルにも$10を送る
でも、$10は1つしかない。だから、そのうちどちらかの取引は無効になる。じゃあ問題は、どちらが先だったのか?
- ボブが受け取るべきなのか?
- キャロルなのか?
これが超重要なんだ。つまり、「順番(時間)」が絶対に必要ってこと。
誰が時間(順番)を決めるのか?

じゃあ、もしビットコインが分散型システムなら… 誰が「時間」を決めるんだ?だからサトシは、とても時間にこだわったんだ。
外部の時計に依存すべきでない
これは、サトシが時間に執着した最大の理由。なぜなら、ビットコインは外部に依存しない独立したシステムだから。

- AppleのiPhoneの時計を使うのか?
- バイデン大統領のノートパソコンの時計を使うのか?
- アマゾンのサーバー?
- イーロン・マスク?
そんなのに頼ったら、もうビットコインじゃないよね?
ビットコインは“自分の時間”を作らなければならなかった

サトシがたどり着いた結論はこうだ。
「他人の時計を信頼できないなら、自分で時間を発明するしかない」
これが、ビットコインの発明で最も頭がおかしい部分だと思う(笑)。
ビットコインに必要な“時間”とは?

ここで重要なのは、ビットコインが必要としている時間は、オリンピック競技でミリ秒を計測するような“正確な時計”ではないってこと。
僕たちが求めているのは、“時間の向き”だ。
“時間の矢(Arrow of Time)”とは?

「時間の矢」っていう言葉があるけど、これはつまり:
- 過去と未来は違うということ。
- 過去の自分は若かった。未来の自分は歳をとる。
- 僕たちは過去を記憶していて、未来はわからない。
- 過去は変えられない。未来は予測できない。
これが「時間の矢(Arrow of Time)」という概念なんだ。
現実世界では当たり前

物理世界ではこれは当たり前だよね。
- 誰も子供時代に戻れないし
- 誰も20年後の自分を知ることはできない
これは、宇宙に存在する「原子」や「エネルギー」がそういう仕組みだから。
でもデジタル世界では?

ところが、デジタル世界には“時間”がない。あるのは「情報」だけなんだ。
つまり、現実世界は原子でできているけど、デジタル世界はバイト(データの集合)でできている。
例)数字と時間
たとえば、「10」という数字があったら、その前は「9」、その後は「11」だとすぐにわかる。もし数字が“時間”だとしたら… 僕たちは過去も未来もすでに知っていることになる。
例)映画を巻き戻す
また、映画を観ているときに、僕たちは「最初のシーンに戻る」こともできるし「エンディングまで早送り」することもできる。
つまり、「時間を自由に行き来できてしまう」。これが、デジタル世界の性質なんだ。
ビットコインに必要なのは、“物理世界の時間”

ここで重要なのは、サトシがビットコインを構築するにあたり、物理世界と同じ“時間の矢”を再現しようとしたということ。
つまり、こういう時間:
- 過去は確定していて、変えられない
- 未来は不確定で、まだ決まっていない
サトシの解決策:Proof of Work

サトシはこう書いている:
「分散型のタイムスタンプサーバーをP2Pで実装するために、使える唯一の方法はProof of Workだった」
つまり、普通の言葉で言うと「インターネット上で、誰にも頼らず“時間”を発明するには、Proof of Workが必要だった。これが唯一の解決策だ」ということ。
Proof of Work(PoW)とは何か?

定義上はこう書かれている:
「Proof of Workとは、ある特定の計算作業をしたことを、他人に証明できる暗号学的手段である。そして、検証は他の人が簡単にできる」
僕(Jack)流に言い直すと・・

「Proof of Workとは、“ランダムな数を当てるために、ある程度の作業をやった”という証明のことだ」
- この作業(= ハッシュ計算)をどれだけ難しくするかは、検証者が自由に決められる
- でも、検証自体は一瞬でできる
なぜPoWが重要なのか?

さっきの話を思い出してくれ。
- デジタル世界には「原子」や「エネルギー」がない
- だから「時間(時間の矢)」もない
- 未来も過去もわかってしまう
でも、Proof of Workは、物理世界からエネルギーを持ち込むことができる。
PoWは“物理世界のエネルギーを、デジタル世界に翻訳する唯一の手段”

これが、サトシの最大の発明だ。
「Proof of Work = 信頼不要のデータ」誰かが「この作業をした」と主張しても、信じる必要はない。自分で検証できるから。
- 誰でも作業できる(大学の学位も、履歴書も要らない)
- 良い意味でコストがかかる(無料では作れない)
- ゴールドと同じく、“偽造できないコスト(Unforgeable Costliness)”がある

Proof of Workによって、未来の作業量は予測できないが、過去の作業量は一瞬で検証できる。
つまり、ビットコインに「変えられない過去(時間の矢)」を与える。
ホワイトペーパーより再び引用:

「この論文では、二重支払い問題に対する解決策を提案する。Peer-to-Peerな分散型タイムスタンプサーバーを用い、取引の時系列を暗号学的な計算で証明することである」
ビットコインは「Proof of Work」で“時間”を刻む

ビットコインのブロックを見てみると――実は中身は「トランザクション」と「Proof of Work(=時間の証明)」だけなんだ。
つまり、ビットコインとは:
「時間を刻むサーバー」= タイムスタンプサーバーなんだ。
ブロックチェーンの時間を見るとよりわかりやすい

ビットコインのブロックチェーンを実際に見てみれば、それがわかると思う。
ただし、ビットコインのブロックエクスプローラーって、なぜか“時間を逆向きに”表示するんだよな(笑)。
本来なら、時間はこっち(右)に向かって流れている。
- パープル(紫)の部分が「既知の過去(確定していて変更できない)」
- オレンジの部分が「不確かな未来(まだ決まっていない)」
未確認トランザクションとは何か?

みんながビットコインのウォレットを使うとき、「この取引は未確認です」って出るよね?それが、まさにこのことなんだ。
- 未確認っていうのは、「その取引がまだ“時間の中”に組み込まれてない」ってこと。
- つまり、「未来に属している」ってことなんだ。

そうやって、サトシ・ナカモトはビットコイン上に「デジタルな時間」を作り出したんだ。もう……信じられないよな。まじで狂ってる(いい意味で)。
「時間」はほぼ完成した。でも、あともう1ピースだけ足りないものがある。それは何か?
光の速度(Speed of Light)

分散型合意のために必要なもの。それが「光の速度(Speed of Light)」だ。これこそが、なぜSolanaみたいなシットコインが動かないのかと関係してくる。超重要。
情報が届く限界:光速

僕たちが分散型の台帳、つまり全員が合意できる「リスト」を持とうとするなら、そのためには「情報の届く速度」を考慮しなければならない。
- 光の速度は、だいたい 50ミリ秒(ms)
- これは、情報が地球上の端から端まで届く“最速”の時間
ビットコインは「時計」である

ビットコインの各ブロックは、こう考えるとわかりやすい:チク…チク…と動く“時計の針”のようなものだ。
PoWの難易度が常に一定なら?
もしProof of Workの難易度が変わらなかったら――大量のエネルギーを投入すれば、「時計を早く進められる」ことになる。
それがどういう問題を生むか?

- 時間が速くなりすぎる
- そうなると、世界中のノードが「合意」に追いつけなくなる
- 結果として、分散型の合意が成立しなくなる
サトシの対策:時間を“遅くする”

サトシはこれについても、きちんと考えていた。彼はこう書いている:
「ハードウェアの進化や、ノードの参加・離脱に対応するため、Proof of Work の難易度は“移動平均”で調整される。目標は、“一定時間ごとに一定数のブロックが生成されること”だ。つまりブロックが速く生成されすぎたら、難易度が上がる仕組みだ」
なぜビットコインのブロック時間は10分なのか?

ここが面白いところ。「10分」という数字自体は、ある意味で任意なんだ。でも、サトシはこの“10分”という長さが絶妙だと判断した。
- 10分なら、光速を考慮しても全ノードが合意可能
- でも、ユーザーが怒って投げ出すほど遅すぎることもない
つまり彼はこうしたんだ。デジタルな時間(時系列)を発明し、そして「全員が同意できる速度」に意図的に調整させた。

誰が言ったかわからないけど、僕が大好きな言葉にこうある:
「Difficulty-adjusted Proof of Work(難易度調整付きのPoW)は、ビットコインを“分散型の時計”にする」
時間が固定されたマネー

- コンピュータがどんどん高速化しても
- ビットコインの発行スピードは、難易度によって調整される
だからこそ、未来に何枚のビットコインが発行されるかが、あらかじめ決まっている。
ゴールドは「地中」に埋まり、ビットコインは「時間」に埋まる

ここまで来たら、理解できるよね。サトシは、「時間」を作り、そこにマネーを“埋め込んだ”んだ。それってどういう意味だと思う?
ゴールドとビットコインの違い:

- ゴールドは「地中」に埋まっている → 「掘れば」出てくる
- ビットコインは「時間」に埋まっている → 未来に行かないと「手に入らない」
だからビットコインは「最も硬いマネー(Hardest Money)」なんだ。
- ゴールドには「供給の限界」がない → 需要があれば、もっと掘ればいい
- ビットコインには「供給の限界」がある → 未来にしか存在しないから、「今」手にいれることはできない
つまり、「ビットコインをもっと手に入れたいなら、時間旅行するしかない(そんなのもちろん不可能だけど)。
彼は ……間違いなく史上最高の発明者

今、ウォール街はビットコインを欲しがってる。価格は$60,000を超えた(2024年当時)。でも… 彼らでさえ“未来”には行けない。だから供給は絶対に増えない。
サトシ・ナカモト。彼は ……間違いなく史上最高の発明者だ。
Energy(エネルギー)

さて、ビットコインはまだ完成していない。
ここで次に理解してほしいのが、「エネルギー」だ。
Proof of Workには“計算 = エネルギー”が必要

まず、Proof of Work(PoW)には計算作業が必要になる。PoWっていうのは、さっき言ったように「ランダムな数字を当てるゲーム」だ。
これには、かなりの労力(work)がいる。
だから、PoWを行うには、計算を実行するマシンが必要であり、そのマシンを動かすためには、当然エネルギーが必要になる。
つまり、PoWを行うには、どうしてもエネルギーが必要なんだ。エネルギーなしでは、この“作業”は不可能だから。
物理法則としての“エネルギー”

みんな物理学者じゃないにしても、「エネルギーがこの宇宙の通貨である」ってことはわかるよね?
物理学では、エネルギーとは:
「ある物体や物理系に“移動”できる、定量的な性質」
のことを言う。つまり、エネルギーっていうのは、この世界の“動力”なんだ。

エネルギーは、公平に分配されていて、すべての人がアクセスできる。
これが、ビットコインにとってものすごく重要なポイント。
なぜなら…
- 生まれた人すべてが、エネルギーにアクセスできる
- でも、誰もエネルギーを“偽造”することはできない
- そして、エネルギーには“議論の余地”がない

つまり:
Proof of Workにエネルギーを要求することによって、ビットコインは「偽造できないコスト(Unforgeable Costliness)」を持つようになる。
ビットコインには「価値(Commodity Premium)」がある
なぜゴールドに価値があるのか?それは、「掘るのにコストがかかる」からだ。
ビットコインも同じ。
- 誰もエネルギーを“刷る”ことはできない
- 誰もProof of Workをズルすることはできない
- だから、ビットコインは「資源のようなマネー」になる

この「エネルギーの消費」こそが、ビットコインを物理世界とつなげる“橋”なんだ。
- インターネット上では、物理的なモノを使えない
- でも、エネルギーなら、Proof of Workを通じて“情報”に変換できる
「ビットコインには裏付けがない」という人は間違ってる

「ビットコインって何にも裏付けされてないんでしょ?」って言う人がいるけど …ちがう、ちがう、ちがう、ちがう!
ビットコインには、現実世界の“原子”が詰まっている。ビットコインには、“本物のエネルギー”が内在してるんだ。

なぜビットコインでは、過去に戻ってトランザクションを消せないのか?
それは:
Proof of Workに費やされたエネルギーが、過去を“防御”しているから
つまり:
過去のブロックを改ざんしたいなら、同じだけのエネルギーをもう一度費やさなければならない = それは現実的に不可能
過去を守るのもエネルギー

さっき出てきた図を思い出してほしい。これは「ビットコインの時間の流れ」:
- 紫が「確定した過去」
- オレンジが「未確定の未来」

ほんと、タイムトラベルできたらいいのに。15年前に戻って、サトシが最初にビットコインをリリースした瞬間から掘り始めたかったよ。
でも、それは不可能。
ビットコインでは「過去を変えることはできない」。その理由こそが、“エネルギー”の存在なんだ。
昔、僕はビットコイン6BTCで絵画を1枚買った。あれは人生最悪の決断のひとつだった(笑)
あの絵、今じゃたった30万円くらいの価値しかない。でも、そのときの6BTCは…… 今なら何百万ドルの価値だよね?
中央銀行とビットコインの違い

FRBとかECB(欧州中央銀行)、イングランド銀行とか… 彼らが持っているリスト(台帳)って、どうなってると思う?
- それらは“紙の数字”
- そこにはエネルギーが使われていない

たとえば、FRBの会議があるとして――「利上げする? いや、やめとく?」「で、昼飯は何にする?ピザでも食べる?」って感じだよ。ほんとに。
エネルギーなんて全然使ってないんだ。
ビットコイン = エネルギーそのもの

ビットコインの台帳には、Proof of Workで消費されたエネルギーが“埋め込まれている”。FRBのリストは、「外のエネルギー」を“参照”しているだけ → だから改ざんも可能。
でもビットコインのリストは、「エネルギーそのもの」を“中に内包している” → だからビットコインは「書き換え不能」で、「信頼が要らない」。
クレイジーだよね。でも、これが本当に革命的な発明なんだ。
Information(情報)

ここまで:
- 「お金」
- 「時間」
- 「エネルギー」
この3つを通じて、サトシがいかにしてビットコインを構築したかを見てきた。
でも、最後の仕上げが残っている。それが「情報」というパート。
「ビットコインって実体ないよね?」という人へ

よくノーコイナー(ビットコイン否定派)はこう言う:
「ビットコインは実体がない」
「手で触れない。目に見えない」
「どこにあるの? 座れるのか?」
って。

でも、答えはこうだ:
情報が資産なんだよ。データが価値なんだ。
現実世界:地図 ≠ 世界

「地図は領土ではない(The map is not the territory)」という言葉があるんだけど、たとえば、僕がシカゴからマデイラ島まで移動したとき:
- スマホの地図では、指をスワイプすれば一瞬で到着する
- でも、実際には12時間のフライトが必要だった

つまり、当たり前だけど:
スマホの地図(情報)は、現実そのものじゃない。
でもビットコインでは逆

ビットコインでは、「地図 = 領土(The map is the territory)」なんだ。
- データ = 資産
- リスト = お金
- 情報 = 現実
リストとトークンの違い、おさらい
これまで話してきた通り:
- 金(ゴールド)は物理的トークン
- ドル(中央銀行発行)は情報リスト

でもビットコインでは:
「リストがお金」であり、「お金がリスト」なんだ
つまり、”台帳(リスト)そのものがマネー”なんだ。
インターネットで動かせるのは「情報」だけ

だから、これは自然な結論なんだ。
- インターネットで転送できる唯一のものは、「情報」だけ
- 情報さえあれば、価値をテレポートできる

ここで、僕のゴールドバグ(※金本位制信者)への皮肉:
「金はお尻に隠すもの。でも、ビットコインは脳内に隠せるもの」
どうやって金を空港に持ち込む?

- 金を脳内に入れる? 無理だよね。
- 耳に入れる? 穴が小さすぎる。
- 結局……お尻に隠すしかない(笑)

でもビットコインは違う:
- 単なるパスフレーズ
- 脳の中に記憶しておけばOK
- 物理的な持ち運びすら不要

GiGiはこう言う:
ビットコインはチェスのようなもの。
なぜかって?それは「ターン制の戦略ゲームであり、隠された情報は存在しない」から。
- 相手にも自分の手が見える
- すべてのルールは事前に決まっている
- すべてが“情報”として記録されている

たとえば、「e4」という一手。これは合法的なチェスの手。
- 相手が「Qd4(クイーンをd4に)」と指す
→ これは違法な手。チェスのルールに反する。

ビットコインも同じ。
- 正しいルールで生成されたデータだけがブロックとして記録される
- 不正な動き(無効なトランザクション)は拒否される
ビットコインのブロックチェーンは「全手順を記録した棋譜」

もし誰かが:
- ビットコインのフルノードを立ち上げて
- 全データ(= チェーン)をダウンロードしたとする
すると、その人は過去すべてのトランザクションを“合法なチェスの手”のように再現できる。
それこそが「情報が資産である」ことの証明だ。
総まとめ:サトシが作ったもの
ここまで話してきた中で僕がいちばん伝えたいポイントをまとめたい。

- サトシは「お金とは何か?」を理解した
- 物理的トークンではなく、「情報のリスト(台帳)」を選んだ
- 誰にも依存しない「時間の矢(Arrow of Time)」を作った
- 時間を“遅く”して、全ノードが合意できるようにした
- 2100万枚というハードマネーを「時間に埋め込んだ」
- エネルギーによって「偽造できないコスト」を生んだ
- エネルギーを使って「過去を守った」
- 情報そのものを「資産」にした
- 検閲耐性を持ったインターネット上の価値転送を実現した
Difficulty-adjusted Proof of Work(難易度調整付きのPoW)

これは、ビットコインの核となるイノベーションの中心だ。
- Proof of Work:物理世界とビットコインをつなぐ橋
- Difficulty Adjustment(難易度調整):時間の一貫性と公平な参加を保証する仕組み
もしProof of Workがなかったら、君のビットコインには、“現実世界の原子”が一切含まれていないことになる。

最近発見されたサトシの新しいEメールの中でも、彼はこう述べている:
「物理世界とデジタルマネーをつなげる方法として、自分が見つけられたのはProof of Workだけだった」
他アルトコインは「科学的に」マネーではない

ここが僕のお気に入りの部分(笑)。
他の仮想通貨、特にProof of Workを使っていないやつらは、科学的にマネーになり得ない。

Solanaって知ってる?「Proof of History」を使ってるらしい。それって何だよ(笑)本当に、何なんだよ、それ?
昔のEthereumはProof of Workだったけど、もうやめた。今は「Proof of Stake(PoS)」になっちゃってる。

今朝、プレゼンの仕上げをしてるときに「Solana、最後に落ちたのいつ?」かググってみたんだよ。
出てきた記事によると、Solanaは2年間で11回目もネットワークダウンしちゃってるんだって。つまり、めちゃくちゃ止まってるってこと。

なぜ止まるのか、わかるよね?今までの話を聞いてきた君たちなら、もう分かるはず。Solanaのクロック(時間間隔)を見てみてくれ。
ブロック間隔:400ミリ秒(0.4秒)

早すぎるんだよ!Solanaは、光の速度を考慮していない。その結果どうなる?
- ノード間で分散合意が取れない
- よって、頻繁にネットワークが落ちる

みんな、“ブロックチェーン”って言うけどやめよう。あれは詐欺ワードだ。ブロックチェーンなんて存在しない。あるのは「タイムチェーン」だけ。
だから、彼らが言う「速いビットコイン作ったよ!」は全部ウソ。光速を越えるなんてありえない。

もしかしたら、EthereumやSolanaには何かの「技術的価値」があるのかもしれない。あるいは、「証券(セキュリティ)」かもしれない。
でも、絶対に“マネー”じゃない。
さいごに

- 発行は「時間に埋め込まれている」
- 発掘速度は時間に固定されている
- 時間旅行しないと早く手に入れられない
- 「ブロックチェーン」なんて言葉は詐欺(正しくは「タイムチェーン)
- エネルギーによって、過去は書き換え不可能になる
- ビットコインは「検閲耐性を持った価値転送装置」
だから、ビットコインは通貨だ。

Whoo.
ありがとう、みんな。




